脊椎脊髄の病気について

脊椎脊髄の病気のイメージ写真

脊椎は背骨のことで、背骨は頭と骨盤の間に24個の椎骨が連なって構成されています。上から頸椎、胸椎、腰椎と呼ばれ、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割りを果たす椎間板があります。椎骨が集まっている状態が脊柱で、体を支える重要な役割を果たしています。また脊柱の中には1~2cmの脊柱管と呼ばれるトンネル状のものがあり、そこに神経の束である脊髄が通っています。これらの脊椎や脊髄に何らかの障害が起こると様々な症状が現れます。

障害としては、加齢による変性や外傷によるもの、さらに骨粗しょう症によって骨が脆くなり、いつの間にか背骨が骨折している脊椎圧迫骨折といったものがあります。脊椎が障害される場所によって、肩こりや腰痛、腕や足のしびれや麻痺などを引き起こす原因となります。

当院ではこうした様々な原因で起こる様々な症状に対して、脊椎脊髄外科専門医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医でもあった院長が治療に当たります。

脊椎脊髄の主な病気

変形性脊椎症

変形性脊椎症は、椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が、加齢などにより退行変性、弾力が失われてしまうことで発症する疾患です。高齢の方にはよくみられるもので、誰にでも起こり得ます。

軽度の場合はとくに痛みがないことも多く、無症状の場合もありますが、椎間板の変性が進むと首や腰に慢性の痛みや可動域の制限が起こります。さらに筋肉の硬直や足のしびれといった症状も現れます。これは椎間板が変性すると、骨に負荷がかかり続けるなどして、骨棘(ほねのとげ)と呼ばれる突出が形成されることも要因となっています。発症した位置によって、変形性頚椎症、変形性腰椎症などとも呼ばれます。

変形性頚椎症は首の頸椎で発症したもので、頸椎を通る脊髄およびそこから分岐する神経を圧迫することで様々な症状が現れる病気です。分岐する神経の部分が障害されると、肩から指先にかけて肩こりや痛み、しびれ、麻痺などの神経に関わる症状が現れます。脊髄が障害されると、日常生活ではボタンが上手くはめられない、また歩きにくいといった症状が現れる場合があります。

変形性腰椎症は腰部に発症したもので、腰痛や足のしびれ、排尿障害などの神経症状が現れる場合があります。腰椎の内部の脊柱管には脊髄が通っており、さらに馬尾神経と呼ばれる神経が伸びています。これらを圧迫することにより、脊柱管狭窄症という疾患も引き起こされ、歩行困難などもきたす場合があります。

脊柱管狭窄症

脊柱管は首から腰まで延び、脳から身体への神経の通り道となっている重要なものです。その管が何らかの原因により首や腰の部分で狭くなってしまうのが脊柱管狭窄症です。それにより脊柱管を通る神経が圧迫されることで様々な症状が現れます。腰で狭くなったものはとくに腰部脊柱管狭窄症と呼ばれます。

腰部脊柱管狭窄症の原因は加齢などによって腰椎が変形することです。加齢のほかには仕事や日常生活で重いものを持つことが多かったり、スポーツで腰に負担がかかったりすることが挙げられます。具体的な症状としては、腰や臀部(でんぶ)の痛み・しびれ、足の痛み・しびれ、足の筋力低下、歩行障害、排尿障害などがあります。

また特徴的な症状として、歩いていると足の痛みやしびれで歩くことが困難になり、しばらく休むと再び歩けるようになるという「間欠跛行」があります。これは馬尾神経が圧迫されて発症し、前かがみになって休むことにより脊柱管が広がって圧迫が和らぐことによります。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にある「椎間板」が、なんらかの原因で飛び出してしまい、神経に触れたり炎症を起こしたりすることで痛みやしびれなどを発症するものです。首(頸)から腰まで、どの場所にも発生する可能性があります。発生した場所によって「頚椎椎間板ヘルニア」、「腰椎椎間板ヘルニア」、「胸椎椎間板ヘルニア」などに分けられますが、とくに腰部で起こりやすいのが特徴です。

椎間板ヘルニアが起こる原因としては、加齢や日ごろの姿勢、座り方、肥満などの生活習慣、ラグビーやアメフトなどコンタクトスポーツによる急激な負荷などが挙げられています。また喫煙による毛細血管の血流悪化でも椎間板の劣化や変性が進み、原因になると考えられています。

頚椎椎間板ヘルニアを発症すると、主に首や背中、肩などに痛みやしびれ、肩こりなどが現れます。脊髄に障害が生じると、力が入らない、箸が使いにくいなどの症状が出ることもあります。胸椎椎間板ヘルニアでは、足にしびれや力が入らない、背中や足に痛みを感じるなどの症状があります。腰椎椎間板ヘルニアでは、腰や臀部の痛みのほか、太ももやふくらはぎまで痛みやしびれが広がったり、足に力が入らなくなったりする場合があります。またどの部分のヘルニアでも、排尿障害や歩行障害を生じることがあります。

脊椎損傷

交通事故やスポーツによる外傷、高い所からの転落など、強い外力が脊椎(背骨)に加わって、骨折や脱臼を起こした状態を脊椎損傷といいます。骨粗しょう症で骨が脆くなっている場合、ちょっとしたことで(例えばくしゃみをしただけでも)脊椎圧迫骨折が起きることもあります。

圧迫骨折などの脊椎損傷は、頚椎や胸椎と腰椎の移行部で起きることが多く、発生した場合、首や背中がうずくように痛み、体を動かすことも困難になります。また骨のかけらなどによって神経根や脊髄を圧迫されるようになると、手足にしびれなどの感覚障害や運動障害、筋力低下が引き起こされます。

脊髄損傷

脊柱管を通っている太い神経である脊髄が損傷を受けている状態が脊髄損傷です。基本的には脊椎損傷と併せて発症しますが、脊柱管狭窄症を発症している高齢者の方の場合、ちょっとした転倒でも脊髄損傷を発症することがあり、脊椎損傷を合併しない場合もあります。

脊髄損傷では、損傷部位によって症状は異なりますが、総じて麻痺などの感覚障害や運動障害、自律神経障害などがみられます。頚髄損傷の場合は四肢(上肢下肢)の感覚障害や運動障害が、胸髄や腰髄損傷の場合は下肢に感覚障害や運動障害が現れます。自律神経が障害されると排尿障害や血圧低下を招き、損傷部位によっては命に関わります。