骨粗しょう症とは
骨粗しょう症は骨が脆く、弱くなって骨折などを引き起こしやすくなる疾患です。原因としては加齢の影響もありますが、生活習慣が関わっている部分もあり、骨粗しょう症は生活習慣病の一つということもできます。
骨粗しょう症は高齢の女性に顕著にみられ、とくに80歳以上の女性では、2人に1人が骨粗しょう症であると言われています。これは骨の新陳代謝に関わっているエストロゲンという女性ホルモンの分泌が閉経に伴って減少することで、骨粗しょう症のリスクが高まるためと考えられています。加えて女性に多い理由として、若いころに過剰なダイエットをするなどし、ピーク時の骨量がより少なくなって、年を取ってから骨粗しょう症になりやすくなってしまうことも挙げられています。
骨粗しょう症の症状
骨粗しょう症自体に自覚症状はありませんが、治療せずに放置していると骨がどんどんもろくなり、ちょっとした衝撃だけで骨折するようになってしまいます。これを脆弱性骨折と言います。それによって日常の生活動作が行いにくくなり、生活の質を大きく下げ、場合によっては寝たきりになって要介護状態になってしまうという危険もあります。
骨粗しょう症が原因の脆弱性骨折とは
脊椎圧迫骨折
重いものを持つ、くしゃみをするなど、ちょっとしたことでも背骨が押しつぶされたように変形してしまうものです。気づかないこともあり、「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。腰が曲がってしまう、慢性的な腰痛になる、10分も立っていられないといった症状が現れている場合、この圧迫骨折が腰椎で起こっている可能性があります。
大腿骨近位部骨折
転倒や足を捻ることで、太ももの付け根の骨に発生します。強い痛みと内出血による腫れが見られます。この部分の骨折は要支援・要介護状態につながりやすいため、非常に注意すべき骨折です。
上腕骨近位端骨折
転んで手をついたり、肩から落ちたりするなどして、二の腕に近い部分が骨折するものです。
橈骨遠位端骨折
転んで手をつくなどして、手首の親指側にある骨を骨折してしまうものです。
骨粗しょう症の原因
骨は新陳代謝によって常に組織が入れ替わっており、古い骨は吸収されてなくなり(骨吸収)、新しい骨が作られる(骨形成)といったことが繰り返されています。これが年齢を重ねるにつれ、骨吸収のスピードが骨形成のスピードを上回る傾向にあるため、骨量が減っていき、骨がスカスカの状態になって骨粗しょう症となってしまいます。女性ホルモンであるエストロゲンは、骨吸収を抑制し、かつ骨形成を促進する作用があるため、分泌量が減ると骨粗しょう症のリスクが高まります。
また骨は約半分がカルシウム、残りの約半分がコラーゲンでできており、「鉄筋コンクリート」になぞらえて、コンクリートにあたるのがカルシウム、鉄筋にあたるのがコラーゲンと例えられますが、骨量(カルシウム)だけでなく、骨質(コラーゲン)の劣化によっても骨粗しょう症を発症すると考えられています。食生活などの生活習慣の乱れや喫煙が、コラーゲンの劣化を促進することが分かっており、近年、男性での骨粗しょう症が増加傾向にある原因ではないかと考えられています。
骨粗しょう症の検査
骨粗しょう症は骨折の有無や、骨量を調べ、基準に照らし合わせて診断されます。骨量を調べる方法はいくつかありますが、当院ではDXA法を採用しています。DXA法は2つの異なるエネルギーの微量のX線を利用し、その透過度をコンピュータで解析し、測定するものです。検査時間は2-3分程度です。
骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症の治療に当たっては、脆弱性骨折を予防していくことが重要になります。とくに腰椎圧迫骨折は、複数の骨が連鎖的に骨折してしまうことがあるため注意が必要です。
まず治療の基本となるのは食事や運動といった生活習慣の改善です。食習慣に関しては、カルシウムはもちろん、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや骨を強くする働きのあるビタミンKを摂ることが重要です。
カルシウムを含む食品としては、乳製品や大豆製品、小魚などがあり、ビタミンDを多く含むものとしては、サケやサンマ、ウナギ、シイタケ、卵などがあります。またビタミンKを含むものとしてはホウレン草やブロッコリー、納豆などがあります。
ただし、ほかに何らかの疾患がある場合、摂り過ぎない方がよいものもありますので医師にご相談ください。なおビタミンDに関しては、日光に当たることでも皮膚で作られますので、散歩や窓際で日光に当たるようにしましょう
骨粗しょう症の改善、予防には運動することも大切です。それは、骨は負荷がかかるほど骨を作る細胞が活発になるためです。ウォーキングなど、あまり無理のない範囲での運動を心がけましょう。ただし、すでに骨粗しょう症が進行している場合、無理な運動で骨折する危険がありますので、必ず医師とも相談ください。
こうした生活習慣の改善を基本に、薬による治療を併せて行っていくことが大切になります。薬には以下のような種類があります。
骨粗しょう症の治療で使われる主な薬剤
骨吸収抑制剤
- ビスホスホネート製剤
- 骨吸収を抑制する作用があります
- SERM製剤
- 女性ホルモン類似作用で骨吸収を抑制します
など
骨形成促進剤
- 副甲状腺ホルモン製剤
- 骨芽細胞を増加させ骨形成を増やす作用があります
- 抗スクレロスチンモノクロナール製剤
- 骨形成作用を増強し、かつ骨吸収を抑えることで骨量の増加を図ります
- 活性型ビタミンD3製剤
- 小腸からのカルシウムの吸収を促進します
- ビタミンK2製剤
- 骨を強くする働きがあります
これらの薬剤には、内服薬や注射薬、また毎日服用のものや月1回の投与のものなど、様々な種類があります。当院では患者さまの症状や進行状況にあわせて治療薬を組み合わせ、処方していきます。