小児の整形外科的な病気について
お子様は日々発達の途上にあり、成長しています。小児整形外科では、この発達・成長という要素を十分に踏まえながら診療を行っていく必要があります。当院ではお子様それぞれの成長段階を踏まえつつ、小児期特有の病気やケガの治療を行っていきます。
先天的な脊椎や上肢、下肢の変形や異常、歩行障害や関節の異常、お子様に多い外傷などについて、後遺症にも十分配慮しつつ診療を行います。3か月健診や1歳6か月健診で運動機能の発達について異常を指摘された、歩き方が少し変だ、普段と動きが違う、手や足などが左右で違いがあるなど、お子様の発達や動きに違和感を覚えたら、お早めにご相談ください。
小児整形外科領域の主要な疾患例
股関節疾患 |
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膝・足・下肢疾患 |
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上肢疾患 |
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脊椎疾患 |
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スポーツ障害 |
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外傷 |
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股関節脱臼
小児の代表的な股関節疾患のひとつが「先天性股関節脱臼」です。これは生まれてくるとき、もしくは生まれた後に股関節が脱臼をしているものです。「先天性」とついていますが、実際には後天的な要素でも脱臼が生じることがあるため、現在では「発育性股関節形成不全」という名称が広く使用されます。これは股関節の骨盤の臼蓋(丸く凹んだ部分)の作りが浅く、亜脱臼や脱臼を起こす可能性のある状態を指します。
治療としては、生後2ヶ月くらいまでであれば、おむつの仕方や抱き方の指導のみで改善することがほとんどです。3~7ヶ月では装具による治療、1~3歳では牽引による治療やギプスによる治療を行います。4歳を過ぎてしまうと手術が必要となる場合があります。
このように診断が遅くなるほど治療が難しくなります。早期に発見されれば、治癒する可能性は高くなりますが、見逃されてしまうと変形性股関節症などに至り、人工関節が必要となってしまう場合もありますので、不安がある場合、お早めに検査を受けることをお勧めします。
脊柱側弯症
背骨(脊柱)は頭から骨盤までを、基本的には正面から見るとまっすぐに、横から見ると緩やかなS字型を形成しバランスをとって身体を支えています。この形が崩れることを脊柱変形と呼び、左右(側方)に曲がっている場合、脊柱側弯症と呼ばれます。生まれつきの背骨の奇形や組織の異常、腫瘍などが原因となる場合もありますが、とくに原因のないものが80%以上を締め、これを特発性側弯症と言います。
特発性側弯症は思春期に発症するものが最も多く、また男子に比べ圧倒的に女子が5~8倍と非常に多くなっています。通常は身長が伸びるのに伴って側弯変形が進行し、成長が止まると進行も止まります。軽度の変形であればとくに腰痛などの症状はなく、その後の生活にも問題はありませんが、ある程度以上に変形している場合はさらに変形が進行したり、内臓を圧迫したりと健康に大きく害を及ぼしますので、早期に発見して治療を開始することが重要です。
治療としては、健診などで脊柱側弯症を疑われた場合、単純X線検査を行なって脊柱変形の程度を示すCobb(コブ)角が25度未満の場合は、定期的に経過観察をしていきます。変形が進行し25度を超えるような場合は、専用の器具を装着して変更の進行を抑制する装具療法を開始します。装具療法は骨が成熟して成長が終了するまで行なわれます。
O脚(内反膝)
足をそろえて膝を正面に向けて立った時、膝の内側に隙間ができる状態がO脚です。歩き始めの乳幼児は基本的にはO脚ですが、2歳6ヶ月ごろにはストレートに近くなります。その後、今度はX脚が強くなっていき、3歳6か月ごろをピークとしてストレートに戻っていきます。通常、5~7歳くらいには成人と同程度のストレートになるとされていますので、1歳半健診などの段階で指摘されたとしても、多くは心配のいらないものです。
3歳になってもO脚が認められる場合、さらに片側のみにO脚が見られる場合は、何らかの病気であることが疑われますので小児整形外科にご相談ください。O脚の原因として疑われるものとしては、「くる病」や「ブラウント病」があります。
「くる病」は成長軟骨が障害される病気で、ビタミンDが不足することによってカルシウムやリンなどのバランスが崩れ発症します。その症状の一つがO脚です。治療としては薬によるビタミンDの補充になりますが、日常生活でも青魚やキノコ類、卵黄などビタミンDを多く含む食べ物の摂取することが大切です。ビタミンD は日光(紫外線)に当たることでも体内で生成されますので、短時間でも外で遊ぶなど日に当たるようにします。
膝関節の内側の成長軟骨に負担がかかることでO脚を起こすのが「ブラウント病」です。乳幼児期の未発達な骨や関節に対し、自分の体重が負担となってしまうことが考えられており、比較的早くから歩き始めたお子さまに多いという報告や、乳幼児の肥満が関係しているとの指摘があります。放置すると変形性関節症となる可能性があるため、早期の治療が必要です。治療としては装具治療を行いますが、赤ちゃんを早くから無理に歩かせようとしないことが予防に繋がります。